2024-04-05

見送りのあと

   古めのレストランから初老の紳士3人が出てきた。 久方ぶりに存分に語り合った後といった感じで、「じゃぁな」とお互いに軽く手を挙げ、うち2人はゆっくりと駅の方向へと歩き出す。 残った1人はレストランの店主という風で、2人の歩いて行った方向をいつまでも見ていた。 時々人の陰に2人を見失うのか体を軽く左右に動かし、そしてまた視点の先に捉えたのか動きは止まり、少し安堵した表情が見えた気がした。 名残惜しそうに視線を遠くに送り続ける。 時間にしたら2分もなかったと思うが、やがて、随分と長いこと居た場所からようやく腰を上げるかのように、ややゆっくりと体の向きを変えて元来たお店の中へと歩を進め始めた。