嵐になりそうな午後
雲がもくもく。 上空におおきなグレーの雲がかかって雷雨にでもなるンじゃないかという雰囲気。 電話ボックスに忘れ傘なのか、無造作に置かれた傘。 その昔に、浅草の雷門からやや南に進んだ辺りの電話ボックスに傘を忘れてきた場面を思い出した。 折りたたみではなく持ち手は細めの竹で巻かれていたと思った。 コンビニで売られていたごく普通の傘で、苔色。 たしかそもそもがコンビニの忘れ傘で、雨の日に、あるコンビニの店長から「いいよ持ち主不在だから持ってけ」と渡されたもの。 以来、雨のよく降ったその年は空模様を見てよく持ち歩き、大きさや軽めの重量感や色や、古びてやや膨らむように不格好となった処なども妙に気に入っていた。 それを使って1年半? 2年?、3年? どれくらいだったか、つい置き忘れてしまった。 緑色の電話機の左側にひょいと掛けて電話をかけて、ボックスから歩き出して10分程して気づいて戻ったが、もうなかった。