2025-04-11

雷雨の日

   曇のち雨の予報どおり、夕方になってポツリポツリと雨が降ってきた。 雲の色は、どこか遠い夕陽のせいか茶色がかったグレーで、水に絵の具を落としたように地上に向かって濃さを増してゆくよう。 電車を降りて傘をさすこともなく目的地へ着き、とある写真展のトーク・ショーに合流して程なくして雷鳴。
   トーク・ショーは、ある写真家が若き頃にロンドンで過ごした日々の物語とそれにまつわる、また近年に至る写真の話。 これまでにも何度か聞いたことのある話あり、新たに聞く話あり、ふと時計を見ると1時間ほどが過ぎていた。 今日は無料でいいよというポスト・カードにサインをいただき、サインをいただく短い間に1つ2つ問いかけると、静かに、そして情熱的に物語を返してくれた。 その中に「そうか」と、少しはっとするようなものを感じつつその場を後にする。 靴を履いて外に出ると、知らない間に膨大な時が経っていた浦島太郎のような気分をどこかに感じつつ、大粒の雨が降り出した人の流れる歩道を足早に駅に向かい。