2013-08-27

ススキの水滴


   夜半まで雨だったようだ。早朝、フサフサしたススキの穂が、水滴を朝日に光らせて道端に伸びていた。「これだ!」と、いきなり朝イチで今日を物語る1枚にと思ったのだが足が止まれなかった。 歩きだったのだが、撮影への気構えが成っていなかった。

   その後ずーっと1日、「あの1枚」が気になりながら過ごした。 そうそう出会える「光景」ではないように思えるからだ。 で、1日、何かと周囲の景色のなかに「あれ」を超える「光景」をと何かと気にかけていたのだが、ついに特に何もなく... しかしこの日の夕日はいい色に焼けた。 遠く大きな積乱雲には夕日が当たり、距離のためか淡いトーンのなかにも存在感がある。 その周囲も、特に北西方向は遠く低めにぐるっと雲が続いて、これも淡い色調ながら絵画的でもある。
よし! と思い立って普段よりも1本北の路線にまで足を伸ばして西行きの電車に乗った。 が、途中2駅しかない停車駅では、交換待ちだ時間調整だと、結局3駅目の終点に着いたときには、雲の色はほぼグレーになっていた。 日の入り18:17。 到着は18:00頃で、西方の山並ゆえか、夕方の色味がなくなるのは、日の入り時刻よりもやや早いようだ。


   で、それでも空の開けた場所を探して街を歩きはじめた。 進んでは立ち止まり、路地を覗き込み、なかなかに怪しい。

   この街は区画整理、というより道路整備のために様変わりの途中だ。 地面の高さというか、地上1階というか、地続きにあった駅の改札は、約3階分の階段を昇ってカラフルなステンドウ・グラスを横目にSuicaをかざして「ピッ」となった。 駅前に通る道路も、新たな路ができれば、駅に立ち寄るための旧道でしかなくなるように見える。 駅前はお決まりのビルの建設現場となっていて、いつもそこそこの人通りに活力を思った小さなお店の並ぶ商店街は、アングラな空気を被って妙な一画になってしまいそうな、ちょっとイヤな予感。

   ススキとはだいぶ離れたが、僅かに残る「以前の街並み」の匂いを、切り取ってみようと思った。