杜のなか
昔、シカゴ美術館で見た鉛筆画がある。 高い木々に囲まれた山道を、あれは木こりだろうか、小枝をたくさん切り出したひと山を背中に担ぎ、木漏れ日の中を歩き行く画だった。 その木漏れ日の射す山道と遠く街の気配、歩を進める1人の男性。 何とも言えない穏やかなひとときが描き出されていた。
山の中というのは、独特な時の流れがあるように思える。 朝の透明な陽射しと、午後のややオレンジ色を帯びた陽射しと、それぞれをたっぷりと湛えるように木々が枝の間から山中へと導き入れて「森の時間」が作られる。 そして日暮れまでの赤い光は、次第に夜の暗さに冷やされて次第に消えてしまう。 森の動植物の営みが、そうした時の流れを好むが故の姿なのではないだろうか。