2025-06-13

遊具

   あれ? この道は初めて歩く。 思わず「ここどこですか?」と人に聞きたくなるような意外な感覚。 「いまどこ?」って知りたければスマート・フォンで地図を見ればよいわけで、その意味では迷い甲斐のない時代。 そう思いながらも進みたい方向とは反対側へクイッと曲がる道に軽く戸惑い。 そして行きたい方向に茂るサツキの葉の合間に銀色の手すりを見つけ、その先に公園があるのを知る。 抜けられる。 近道。 渡りに船的にふらりと足が向く。 更に渡りに船的にいい感じに古びた滑り台が目に入る。 曇天に鈍く光をかえす塗料の剥がれ気味の鉄パイプ。 階段は急で狭く、登った先の台の装飾のアーチも低く、そうした辺りにも年代物の匂いを感じる。 匂いと言っても木々の茂った公園も鉄の遊具もきわめて無臭な風景で、それが却って無言で年季を訴えさせるような静けさを醸す。