2023-08-05

シャッター

   閉店して1年半ほどだったか、いまだ時々気になる時計屋さん。 一度、腕時計を診て頂いたことがある。 主は、長身で声の太い、骨も太そうな白髪の老いた紳士で、その腕を頼って「ここでないと」と不調な時計を持ち込む客に何度か遭遇した。 様々な時計や測定機材やらが所狭しと並べられた小さなお店で、カウンター越しに症状を伝えると「診てみましょう」と目にルーペをはめこみ、くるっと背を向けて黙々と作業に入る。 常に「カチコチ」と小さな大合唱に囲まれ居心地の良い店内だった。