2022-03-13

西日のころ

   まだまだ弱さはあるけれど、夕方の時間がゆっくり流れ出した感のある、今年の3月半ばの西日の頃。 半袖に汗ばむ夕暮れ時までは4-5ヶ月か。 今日は冬の装いから少し薄着にしての汗ばむ散歩。
   ほんのり思い出したのは、32年前にAmtrakで隣の席になった中国人。 「俺は中国の華南から来た。 そこじゃぁ夏は、家のなかで、古い造りの家で窓なんて開け放ってだ、こうしてじっと座っているだけで汗がながれだすほど暑いんだ。」と。 手持ちが心もとなくて夕飯を抜き、初めてのAmtrakで極度に効いた冷房のなかにTシャツ1枚でブルブル震えているのを見て、「お前は夕飯のアナウンスがあった時に席を立って写真を撮っていて聞き逃しただろう。夕飯を逃したな。食べないから寒いんだ。」と。 目的地が近づくと、「俺はビジネスで来たんだ。これからひと仕事さ。」と目を輝かす。 そのほんの少し浅黒く、背丈も骨格も日本人くらいの中国人とは 6時間ほど一緒に過ごしただろうか。 実は、どうせならアメリカ感バリバリの隣人がよいなぁと思っていたので、乗車駅で乗り込む際、先に席に居た自分と目があったその中国人がごく自然にシートに沈み込んだときには、「東洋系は妙なところで気を遣いそうだしなぁ」とやや気持ちが引いた。 その人の目的地アイダホで、間もなく発進しそうな窓越しにお互いを見つけて手を振ったのは、この日のこの奇遇から、互いの「この先」にエールを贈りあうような感触だった。 日没間際の西陽に照らされ、スモーク・ガラスのアンバー色越しにもわかるオレンジ色の風景だった。 (時々思い出す光景なので、以前にも同じ場面を書いたかも。)