今年の1月だったか、アメリカン・ハウスを撮りに東福生へ向かった。 その途中でLeica SL2-Sが故障、電源が入らずウンともスンとも言わなくなった。 背面液晶画面が熱暴走のような妙な表示になって操作を受け付けなくなるという症状は以前からあり、常にイヤな予感を抱えつつだったがついに。 その日はiPhoneで撮ってきたのだけど、あれ以来、一眼で向き合ったことがなかったことが気になっていて、きょう久々に足を運んだ。
空家になってから1年ほどになるだろうか、でも管理はされているようでどことなく人の「気」はある。 物干し台に張られたロープにはピンチ(洗濯バサミ)と、それらが朽ちて残った金属のスプリング部分が残っていて、残っている生活の匂いとしてはそれくらい。 その昔、ハワイへの出張の際に部屋に洗濯物を干すために洗濯ロープと木製の洗濯バサミを買ってきた時のことを思い出しつつ、木製ピンチにはアメリカの風景を重ねて部屋でひとりにんまり洗濯ものを挟んで満足感に浸ったのも思い出しつつ、どこかの誰かがこの「ハウス」で生活していた時代に時間に敬意を表しながらズーム・リングを回し。
徐々に残り少なくなってきたこの街の「アメリカ臭」に名残惜しさと重ねられた歳月を思い。
最近気になる曲、Bob DylanのBlowin' in the Wind。 2枚目のアルバムに収録されているらしい。 ふぅーんと思いながら、タイトルに馴染みのあるLike a Rolling Stoneのレコード・ジャケットに目を遣ると「HIGHWAY 61 REVISITED」の文字が。 何気なく「US-61」を検索するとミズーリ州のとある場所にピンが打たれた。 これがUS-61の中間地点なのか何なのかさっぱり不明で、ズーム・アウトするとSt. Louisの文字。 ピンの位置はSt. Louisから20マイルほど南にあった。 今度はズーム・アップすると「Blues Highway」の文字。 幹線道路にはよくその地にちなんだ名称が付けられるのだけど、Bob Dylanの出生地を象徴するかのようなこの命名にはちょい感動。 Bob Dylanの音楽はよくRockとかFolkと言われるので、Bluesというともうちょっと南のイメージなのかもしれないけれど。 それにしてもカッコ良すぎる命名。 Like a Rolling Stoneは6枚目のアルバムに収録だそう。
このタイトルに馴染みがあるのは、1987年頃に発行された景山民生の小説「転がる石のように」を発行当時に読んで微妙な共感を思ったところから。 感じた「微妙」な感覚は年齢差が故か。
ストーリーは、Googleの要約(少し加筆あり)によると「1960年代最後の年、日本人の若者である上山哲夫が、アコースティック・ギター1本を持ってアメリカへ旅立つところから始まる。子供の頃、彼は米軍ベース・キャンプの金網の向こうに『アメリカ』という輝かしい国を見て育った。心の中に居座り、求め続けていたその風景 ---『本当のアメリカ』を、ハワイでの一時滞在を経てロサンゼルスへ、そして大陸を横断して南部に立ち寄りニューヨークへと旅を続ける。」 旅の最終地はたしかウッドストック。 ベトナム戦争を体験したアメリカで大きくうねる時流の真っ只中での、哲夫の葛藤と自身のホーム・カミングの物語。
1990年頃発行の石川好の小説「ストロベリー・ロード」にはアメリカについて「人を呼び集め、返さない国」と表現されている。 「自由、平等、あり得ない言葉が燦然と輝いて響いた国、それがアメリカ」(一部改変)と、その求心力を語っている。 景山民生、石川好、共に1947年生まれ。 幼少期・青年期に戦後の強大なアメリカを体感した世代。
