2013-09-19

空の奥行きに


   会議詰めの1日になった。 課題山積で気ぜわしい時間を過ごす事の多い最近。
   外に出ると、日没直後といった風の空に遠く飛行機雲が小さく光るのが見えた。 久々に無限遠に目が焦点を探し、同時に気温低め、湿度低めで僅かに葉の香りの混じる空気を吸い込む。 この動作で、自分と空との距離に現実味が出、遥か遠くの飛行機の航路を思う。
   以前、イタリアからモスクワ経由で成田に向かう途中、モノトーンに近いモスクワを飛び立って暫く、シベリア上空で見た、赤い飴色の夕陽が一瞬思い返された。 乗客の多くが、その赤ともオレンジとも表しがたい透き通るような夕陽に、夕暮れに、そして旅も終わろうとしているその一瞬一瞬に、静かに身を委ねているようだった。
   遠い飛行機雲の飛行機に乗る乗客は、今見ている夕暮れとは違った夕暮れの中にあるのだろう。 "空の奥行き"に小さく息をふく、短い夕暮れのひととき。