アメリカ楓の実
アメリカ楓を初めてみたのはアメリカでだった。 大学の寮の中庭に、大きな楓の木があって、ちょうどその寮に引っ越した直後くらい、秋の学期が始まってひと月後くらいに紅葉が始まった。 緑色一色だった木が、黄色・オレンジ・朱色・赤・深紅・赤紫・紫と、様々な色で彩られていった。 約2週間の間だったと思うが色彩鮮やかに、特に週末の晴れた午後には、時折キャンパスを行き交う人の姿も影も、北緯45°の寒い冬の前のひと時の、穏やかで暖かな、強目だけど柔和に照らし出す陽とで、「ポップ・アート」という言葉を連想させるような時間が流れていた。 日本でこの木を見かけるようになったのは、それから約15年後のことだった。 この実を見るようになったのはそれ以降のこと。