2021-04-22

小さな花

   このレンズ、購入後に画面中心の「芯」が弱いのが気になってメーカーに相談、調整をしていただき先月戻ってきた。 以後、色々と撮ってみているのだけど、このレンズならではの「線の細さ」、「主張しすぎず繊細、それでいて力強いエッジを描くピント・ピーク」、「静かな立体感」、「画の真ん中あたりに顕われる『撮り手のテリトリー』とでも言えそうな眼前の空間の絶妙な描写」、「被写体の存在感」といった特色が、...やや弱まってしまった感じがする。 変じて「大人しくて控えめ」、「画面全体的に滑らか」な感じで、大きな湖に長い波長の水紋が静かに行き渡るかのような。ある種の静寂を思う雰囲気。 とは言え微細な差異で、明らかに感触には違いがあるのだけど、自分でシャッターを切った写真でなければ もしかしたら自身でも判別できない。

   調整はお願いした通りで、「画面中心の芯が弱く、むしろやや周辺の方に芯があるが、芯を中心に持ってきてほしい」、「画面にザラつきを感じるので改善できるものなら修正してほしい」 という通りに、画面全域にかなり均一に描写力が行き届き、滑らかさも得られた。 お願いした通りなのだけど... 使い続けるなかに、当初の感触の方がこのレンズらしさだったとも思えてくる。 恐縮ながら、再度の調整をお願いするかを... 思案中。 ただ、その方向へ振ると樽型収差がやや強めに、画面のザラつき感が少し出てくるようにも思う。

   今日、小さな花を撮ってみようと思ったのは、その解像感を再確認したかったがため。 この一連の調整は、おそらく球面収差の微調整を行うと推測するものの、設計段階の話ではなく完成品に対して行う? が可能なのかは不明ながら、レンズ構成を見る限りでは後ろ側の群を前後させるくらいしか手は無さそう。 今回の調整では、こちらが想定していた方向性と、実際に調整で得られる特性の変化とが異なるものだったのかもしれない。 現実問題として諸々の特性は、おそらく「あちらを立てれば...」的な事情はあるものなのだろう。 そして、その細かな取り組みをしてくれた心意気に感謝。 また、そうした微調整で光学性能を引き出せる技術陣の存在に感服。

   もう少し撮り続けて様子を見ながら、メーカーの云う「あえて球面収差を残すことで、絞り開放ではなだらかで美しいボケ味、絞り込めば鋭い切れ込みを見せる描写力が写真表現の幅を広げます。」との底力を、もう一度だけ追ってみたいと思う今。 そう「ボケ味と切れ込み」、Nokton Classic 35mmは これ。